2009年に香川小児病院で行ったプロジェクトは児童思春期病棟―精神科の子どもたちが入院していた殺風景な病棟をなんとかしてほしいというものでした。壁に絵を描くことになりましたが、ただ作家さんに依頼するだけではなく、患者さんや職員にも制作に関わってほしいと、少しずつ少しずつあえて時間をかけて小さなパーツを塗り絵のように描いていくことにしました。それでつくったのが「パッチワークと青い木の鳥たち」です。葉っぱは一人1枚自分の型紙をつくって、その葉っぱをどんどん増やしていくので、完成図がわからないというスタイルで描いていきました。
その時に大切にしたのは、一緒につくるということ。どんな雰囲気にしたいのか話をして、それを聞いたアーティストが提案し、それいいねって対話しながら、納得しながら、時間をかけてものづくりをする。その結果、職員さんの病院への愛着が育つ。この壁画を描いた時に看護師さんが「壁画を自慢してますよ」って言ってくださったのがすごくうれしかったです。
職員さんが誇りを持つ改善ができたことが、私の一番の喜びで、だから今もこの仕事をしているのだと思います。患者さんに落ち着きが出たとも言われました。以前は、この病棟の子はものにあたりがちで修理が大変だったそうですが、でも絵を描いてからそれがほとんどなくなった、と。またメディアの人たちが取材に来てくれるので、自然に広報ができました。
今ふりかえると、そのプロジェクトを通して、職員の帰属意識の促進、環境改善美化、地域に開かれた病院づくりや地域の人が病院に関心を持ってくれる、そういう病院づくりが、アートのミッションとして出てきたのではないかと思います。
ヘルスケアアートの種類
- 壁画
施設名
香川小児病院
施設内の設置・実施場所
廊下
設置・実施年
2009年
関係団体・個人とその役割
アートディレクター:森合音
デザイン・指導:マスダヒサコ
制作協力:患者、医療スタッフ他
関連ページ
artsproject 活動実績 香川小児病院「パッチワークの樹と青い鳥たち」
https://arts-project.com/project/13kagawasyoni-hospital/第1回 ヘルスケア・アートマネジメント連続講座 2018.07.04 講義録
「病院アートディレクターの役割」
四国こどもとおとなの医療センター ホスピタルアートディレクター、
NPO法人アーツプロジェクト 理事長 森 合音
https://healthcare-art.net/case/mori.html
事例紹介 森合音