霊安室のプロジェクト「青い花に……」

四国こどもとおとなの医療センターは、2つの病院が統合されて大きな総合病院になりました。2013年の開院に際してホスピタルアートを全面的に導入しました。

アートを導入する時には、コンセプトを決めて、サイズや色、材質、サインとの連携、法規制との整合性などを決めていきます。病院は美術館ではありませんから、長い間ちゃんと作品が生き続けられるかが重要となり、そのためには設計士さんや施工業者さん、多くの人と「対話」が必要になります。

開院後の活動のひとつ、霊安室のお話をします。霊安室からの地下通路はコンクリート打放しですごく殺風景でした。そこをなんとかしてほしいという看護部の要望をかたちにしていったプロジェクトです。お見送りの場所である地下通路の壁に、職員が鎮魂の青い花を描く。言葉の代わりに、祈りを込めて。2014年の6月7日から3日間、177名のスタッフが参加してくれました。

医療者は、どんな患者さんも元気で帰してあげたいという気持ちで医療をします。ところが人はいつか必ず死を迎えます。時には助からないこともあります。そういう時、もっとしてあげられることはなかったかと思うのが医療者なんですね。その医療者の痛みを、言葉にならない思いを、アートにして伝えたのが「青い花に……」のプロジェクトでした。

患者さんに聞けば言葉は返ってきますが、実は目に見えていないところに、深いニーズがあって、最初は痛みとか愚痴とか嫌な感じで見えるんですけども、実はその根底にある、その人たちが本当に望むものにコミットしていけた時に、初めて何か新しいものが提案できたりするのではないでしょうか。表現していることの裏にすごく多くのものを持っている。たぶん認知症の方だってすごく豊かな人生があって、そこを忘れて目の前の事だけで接すると間違ってしまうんじゃないかと思います。

ヘルスケアアートの種類

  • 壁画

施設名

四国こどもとおとなの医療センター

施設内の設置・実施場所

地下通路

設置・実施年

2014年

関係団体・個人とその役割

アートディレクター:森合音
監修:画家 島田玲子
制作:医療スタッフ

関連ページ

四国こどもとおとなの医療センターHP ホスピタルアートについて
https://shikoku-mc.hosp.go.jp/about/hospitalart.html

第1回 ヘルスケア・アートマネジメント連続講座 2018.07.04 講義録
「病院アートディレクターの役割」
四国こどもとおとなの医療センター ホスピタルアートディレクター、
NPO法人アーツプロジェクト 理事長 森合音
https://healthcare-art.net/case/mori.html

artsproject 活動実績
四国こどもとおとなの医療センター 地下通路「青い花に…」
https://arts-project.com/project/30shikoku-kodomo-otona-med-aoihana/

事例紹介 森合音